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サプライズを創出し続ける人々の
想像を超えるアイデアソースをご紹介します。
2016年1月8日
経営戦略チーム 坂井 篤さんのアイデアソース
第八回
想像を超える「楽しい空間」
好きなモノがもつ不思議な力
「BEAMS AT HOME」、 BEAMS のスタッフがどんなモノに囲まれて暮らしているかが紹介されている本です。好きなモノに囲まれて暮らす生活の楽しさはもちろん、愛着のあるモノが力をもっていることを感じさせます。ただ、ボクにとってはインテリアBOOK ではありません。BEAMSが打ち出してきた様々なテーマやコンセプトの起点になっている「ヒト」という要素が、わかりやすいビジュアルによって次から次へと飛び込んできます。そのため、あの文字ばかりの「BEAMS戦略」という本よりも、BEAMSというブランドがよくわかる“ビジネス書”だと思っています。
ボクの父親は自営業でした。ボクが小学校高学年になると時々学校を休ませ、委託工場や得意先に連れて行くようになりました。家では厳しく怖い「カミナリ親父」でしたが、仕事先からの帰りには自分の好きな店に必ず寄り道をしては、いろいろなモノを買い集め、家とは違う顔を見せました。そんな父親と街を歩きながら、学生時代に行ったアメリカの話をするのは、ちょっと大人になった気分でした。
中学2年生になった春、前から密かに狙っていたネイビーブレザーを買ってもらいました。ボクにとって、ネイビーブレザーは、憧れのアメリカン・スタイルの象徴でしたが、父親と並んで一緒に街歩きを楽しむための大人の正装でもありました。
父親を亡くしたのは、その秋のことです。葬儀には、そのブレザーを着て、父親が遺したネクタイの中から一本を選び、自分で初めて結んで列席しました。そのスタイルは、なんと母親の提案でしたが、自分自身の希望でもありました。ただ、黒ずくめの服装が多い中、ストライプのネクタイをしてネイビーブレザーを着た少年はあまりにも目立ち、翌日学校に行くと担任の先生に「あんな派手なカッコをして、お母さんをあんまり悲しませるな。お父さんも怒っているぞ」とひどく叱られました。もちろん反論はしませんでした。ただ、それ以来、あんなに好きで愛着のあったネイビーブレザーと、どのようにつき合っていいかがわからなくなり、「寄り道をするために仕事をしている」ようなワークスタイルを持っていた父親への思いといっしょに、タンスの奥へ奥へとしまい込んでしまいました。
そのネイビーブレザーを「タンスから出してみたら」と薦めてくれたのが、BEAMSでした。当時のBEAMSは原宿の2階建て雑居ビルのなか、上へあがる螺旋階段の裏側にあって約6~7坪の小さな店でした。誕生したときの名前は“American Life Shop BEAMS”、今から40年前のことです。楽しそうなモノが所せましと置いてあり、店内は、この「BEAMS AT HOME」のどこかのページのような雰囲気で、モノだけはでなく、それを使ったときの楽しさが伝わってくる店でした。そこで、ボクは好きなモノに囲まれる楽しさ、愛着のあるモノが持つ力を当時のスタッフから教えてもらいました。それこそ、ボクのライフスタイルの原点となるような忘れがたい体験でした。
40年前に誕生したBEAMSが、ブランドとして今なおボクをひきつけるのは、時代が変わってもモノの持つ力を信じ、そのモノをセレクトして伝えてくる感性です。
「愛着のあるモノたちは、それぞれの歴史を伴って、どんな時も自分の味方になりパワーをくれる」という一文がこの本の冒頭にあります。それは、40年前、親父への思いもあり、愛着のあるネイビーブレザーとどう向き合っていいのかを悩んでいるときに、あの原宿のビルのなかの螺旋階段に腰掛けながら聞いた言葉でもあるような気がします。
アメリカの経営学者であり、マーケティング学者のフィリップ・コトラーは、その著書の中で、“ブランドとは、顧客にポジティブな体験を提供する社員の手によって築かれるものである”と述べています。それは、このBEAMS AT HOMEのページをめくっているとよくわかるのではないのでしょうか。この本に登場する一人一人がブランドを築き、一人一人がブランドであることを。なお、フィリップ・コトラーの著書はこう続けています。“ただし、忘れがたい体験を顧客に提供できるかどうかが勝負の分かれ目である”と。
ボクの父親は自営業でした。ボクが小学校高学年になると時々学校を休ませ、委託工場や得意先に連れて行くようになりました。家では厳しく怖い「カミナリ親父」でしたが、仕事先からの帰りには自分の好きな店に必ず寄り道をしては、いろいろなモノを買い集め、家とは違う顔を見せました。そんな父親と街を歩きながら、学生時代に行ったアメリカの話をするのは、ちょっと大人になった気分でした。
中学2年生になった春、前から密かに狙っていたネイビーブレザーを買ってもらいました。ボクにとって、ネイビーブレザーは、憧れのアメリカン・スタイルの象徴でしたが、父親と並んで一緒に街歩きを楽しむための大人の正装でもありました。
父親を亡くしたのは、その秋のことです。葬儀には、そのブレザーを着て、父親が遺したネクタイの中から一本を選び、自分で初めて結んで列席しました。そのスタイルは、なんと母親の提案でしたが、自分自身の希望でもありました。ただ、黒ずくめの服装が多い中、ストライプのネクタイをしてネイビーブレザーを着た少年はあまりにも目立ち、翌日学校に行くと担任の先生に「あんな派手なカッコをして、お母さんをあんまり悲しませるな。お父さんも怒っているぞ」とひどく叱られました。もちろん反論はしませんでした。ただ、それ以来、あんなに好きで愛着のあったネイビーブレザーと、どのようにつき合っていいかがわからなくなり、「寄り道をするために仕事をしている」ようなワークスタイルを持っていた父親への思いといっしょに、タンスの奥へ奥へとしまい込んでしまいました。
そのネイビーブレザーを「タンスから出してみたら」と薦めてくれたのが、BEAMSでした。当時のBEAMSは原宿の2階建て雑居ビルのなか、上へあがる螺旋階段の裏側にあって約6~7坪の小さな店でした。誕生したときの名前は“American Life Shop BEAMS”、今から40年前のことです。楽しそうなモノが所せましと置いてあり、店内は、この「BEAMS AT HOME」のどこかのページのような雰囲気で、モノだけはでなく、それを使ったときの楽しさが伝わってくる店でした。そこで、ボクは好きなモノに囲まれる楽しさ、愛着のあるモノが持つ力を当時のスタッフから教えてもらいました。それこそ、ボクのライフスタイルの原点となるような忘れがたい体験でした。
40年前に誕生したBEAMSが、ブランドとして今なおボクをひきつけるのは、時代が変わってもモノの持つ力を信じ、そのモノをセレクトして伝えてくる感性です。
「愛着のあるモノたちは、それぞれの歴史を伴って、どんな時も自分の味方になりパワーをくれる」という一文がこの本の冒頭にあります。それは、40年前、親父への思いもあり、愛着のあるネイビーブレザーとどう向き合っていいのかを悩んでいるときに、あの原宿のビルのなかの螺旋階段に腰掛けながら聞いた言葉でもあるような気がします。
アメリカの経営学者であり、マーケティング学者のフィリップ・コトラーは、その著書の中で、“ブランドとは、顧客にポジティブな体験を提供する社員の手によって築かれるものである”と述べています。それは、このBEAMS AT HOMEのページをめくっているとよくわかるのではないのでしょうか。この本に登場する一人一人がブランドを築き、一人一人がブランドであることを。なお、フィリップ・コトラーの著書はこう続けています。“ただし、忘れがたい体験を顧客に提供できるかどうかが勝負の分かれ目である”と。