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想像を超えるアイデアソース

サプライズを創出し続ける人々の
想像を超えるアイデアソースをご紹介します。

2015年11月6日

調達チーム 櫻井 宏美さんのアイデアソース

第六回


想像を超える「サバイバル」

生きることへの執着
「孤島には、31人の男とたった1人の女。」
そんなあおり文句に惹かれて手に取ったこの本を、私はなぜか現代社会を生きるためのサバイバル本として読んだ。

南海の無人島に漂着した熟年夫婦の隆と清子。そののち島に流れ着いた二十数人の若者と置き去りにされた数名の中国人。
彼らはその島をトウキョウジマと呼び、各所にオダイバ、シブヤ等と名付け、救助される(もしくは脱出する)ことを願いつつ、いつしか小社会を形成し始める。リーダーシップを発揮する者、ガツガツする者、手近なところで満足する者、はぶかれてしまう者など、さまざまな個性を持った人間たちが暮らす様子はさながら社会の縮図のようだ。
そして島民32人のうち、女性は清子ただ1人。

この閉ざされた集団の中で「ただ1人の女」というのは「多」の中の「個」という特性の例にしか過ぎないように思う。そしてそれは強みでもあり弱みでもある。
作中、清子はそれぞれのシーンで生き残るための選択を余儀なくされるが、限定された環境のなかで自分の持つ特性を最大限どう活かすか、また刻々と変わる状況をいかに読むか、いざという時の決断力、こだわらずに対応できる柔軟性、人脈と情報が重要で運が結果を左右することもあるなど、自分の実生活やビジネスシーンと重ね合わせるような展開が多々あり、ふとわが身を振り返った。

思えば私にもこれまで幾度か選択や決定の機会があったが、行き当たりばったりの対応であったり周囲に流されたりで、清子ほど積極的には立ち回れていない。その違いは何かといえば、人生や物事に対する目標があるか、その達成のために努力しようとしているかではないだろうか。
清子には文字通り「なんとしても生き残りたい」という明確な目標がある。では、私はどうだろう。おなじ目先の問題を解決するにしても、その先に明確なビジョンを持っているかどうかでおのずと選択肢は変わってくるはずだ。
この本を読んで「自分が生きる」ということに対して最も真剣に考えるのは自分しかいないのだと気づいた。人生にもっと執着しなければいけない。目標とするビジョンを作りそれに向けて自分をマネジメントする必要がある。清子と私は同年代。まだ遅くは無い。これからの人生、清子のようにとまでは行かずともタフに貪欲に生きていきたい。

最後に、この作品は映画化されたのでご存知の方もいらっしゃると思うが、映画のほうは清子を超美人女優が演じていた。それでは「限定された環境の中なら普段は需要がない太ったおばさんが高価値となる」という要素がなくなってしまうと思うのだが、いかがだろうか。

東京島

桐野 夏生
出版社
新潮社
価格
590円+税(文庫)