想像を超えるアイデアソース

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2019.10.4

第五十回 想像を超える「推理小説」

カーテン
アガサ・クリスティー
田口 俊樹
出版社
早川書房
価格
860円+税

行動のわずかな変化を見逃さない

現実の世界と空想の世界を行き来するツールに「推理小説」があります。
本は心の栄養と言われるように、作者が織り成す言葉の世界についつい巻き込まれ、平凡な日常から、謎を解きながら犯人と対決する非日常の世界へと誘われていきます。今は、電子書籍という形で、読書が広まりつつあるようですが、私は次のページをめくる感覚や、あと20ページほどしかないのに、まったく解決の糸口が掴めない焦りのような感覚を味わうことができる文庫本で読む事にしています。

私が好きなアガサ・クリスティーの推理小説は、探偵と読者が、フェアに謎解きの対決ができるように、必要な手掛かりがすべて描かれています。人間関係にはじまり、動機は何なのか、凶器は何か、どうやって密室をつくったのか、アリバイは何を利用したのか、探偵はひとつひとつの事柄に推理を巡らせて謎を解明していくのですが、読み手である私も一緒に推理していくことになります。探偵と同じように手掛かりに気づき、答えがわかれば探偵気分を味わえますし、どんなに頭をひねってもわからずに、解決編になってから「あぁ、あの時の行動はそうだったのか」とすっかりだまされたときには、悔しさよりもむしろ心地よさを感じます。

「それが業務と何の関係があるの?」と思われるかもしれません。
推理小説を読み解くためには、その国の風土や習慣、登場人物ひとりひとりの生活環境や性格までも考慮しなければなりません。それぞれのキャラクターの立ち位置を理解し、次の行動を予測し、わずかな変化も見逃してはならないのです。製造現場も同じで、それぞれの業務分担・受注状況を鑑み、わずかな変化を見落とさず、状況の変化を読み解き、事前に予測し、芽が小さいうちに対処しておけば大きな問題へと発展することはありません。一見、何のかかわり合いのない「推理小説」も「製造現場」も、中心となるのは人間。そこに共通点があるのです。

予測がうまくいった時には、まるで何事もなかったかのように、円滑に物事が進むので、顔には出さずとも心の中では「よし!」とひとりで、ほくそ笑んでいます。これからも観察を続け、小さな変化を見落とさないようにしていければと思います。