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2019.3.1

第四十三回 想像を超える「企業文化の源泉」

現代語で読む日暮硯
恩田 木工
訳・解説
堤 清二
出版社
三笠書房

※この本は絶版しています。

18世紀の藩政改革の記録に企業文化を見る

1970年代の世相を、堤清二は「近代を形成した西欧文化そのものへの懐疑と自己点検の姿勢」と解釈する。当時、日本には日本のやり方があり、この『日暮硯(ひぐらしすずり)』こそが、戦後日本を経済大国に押し上げた背景であり、根拠であるとする風潮があった。
1700年代後半の信州松代藩に残る藩政改革の記録が原本。イザヤ・ベンダサン(山本七平の筆名)がユダヤ人には歴史上存在しないと賞賛する名臣・恩田木工が敢行した行政改革を、堤が現代語で平易に描きなおし、さらに解説を執筆。倹約や取立てを強行し、財政再建に失敗した前任者に代え、15歳の藩主・真田幸弘が39歳の恩田木工に改革を命ずる場面から始まる。
人間は自発的経験をもっともよく理解するものだから、この理解の上に統制を行おうと考える。藩にはびこる賭博ひとつとっても、道徳論から律を発することをせず、あえて体験させることで自然消滅を実現する。悪事を働いた人間を行革の支援に回らざるを得ない状態に追い込む手練。次々と政策を打ち出し、一方的理論付けを戒め、共感を醸成しながらものごとを改善に向かわせる。上手すぎると感じるトピックもあるが、史実として冷静に分析を加える堤。
堤は日本的経営の分析から見えてくる特徴を、日本的経営に対する評価と混同することに警鐘を鳴らす。その特徴を支えている思想的特質を客観的に把握することが、状況変化によりそれが弱点として作用しないための準備になると主張。さらに『日暮硯』には企業文化論を感じるという。おそらく日本的経営の拠り所としてではなく企業文化のありようとして対峙したのではないかと感じさせる。数多くの文芸作には辻井喬のペンネームを使う堤清二が本名で本書を発表した理由がきっとここにある。

※堤清二(つつみ・せいじ、1927年~ 2013年)は、日本の実業家、小説家、詩人。筆名は辻井喬(つじい・たかし)。西武流通グループ代表、セゾングループ代表などを歴任した。