想像を超えるアイデアソース

サプライズを創出し続ける人々の
想像を超えるアイデアソースをご紹介します。

2019.7.5

第四十七回 想像を超える「装い」

matohu
デザイナー
堀畑 裕之
関口 真希子
URL
https://www.matohu.com/

両立できないアンバランスの中に自分のバランス感覚を追い求める

ふとした香りで、昔の記憶が脳裏に浮かび、懐かしんだり切ない気持ちになるように、装いや佇まいから、その人の人となりが、垣間見えるような気がします。

普段着るものに執着しない彼が、数年に一度着る、父親から譲り受けたブランド品のジャケットを持っていたり、フリルのワンピや甘めな服を着ている生まれも育ちも東京の彼女が、赤い広島カープのバッグを持ち歩いたりとか・・・

matohuは、男女2人のデザイナーによるブランドで、日本人が古くから持つ美意識と文化を日常の中で嗜むツールとして、衣服や服飾品を、その背景や製法と共に発信しています。

シーズン毎にテーマがあり、「なごり」というテーマでは「波残り」の語感から抱く、過ぎ去るものに対する慈しみや終わりを迎えるものに対する敬意を、秋陽に輝く黄金色のイチョウ並木/晩秋のつつじの紅葉/冬の北窓を開いた日差し等から象り、装飾やパターン、ろうけつ染めによる色合いと質感に落とし込んでいます。「かさね」というテーマでは、日本人が持っていた「かさね色目」と呼ばれる、身近な風花や風景を色に置き換え、色の重なりで表現する色彩感覚をもとに、昔とは違った美意識を持つ現代の人にとってのかさね色目を探し、身にまとう面白さを発見させてくれます。装いという言葉は、よそ行きの身支度をするのに、服装を整えたり、化粧を施したり、装飾品を身に纏う事に使われますが、転じて、平静を装う、偶然を装う、~風に装うというように、そうでない物事を見せかける意味としても使われます。

SNSの普及と媒体の多様化で、その場の空気を言葉や服装で装うことは、今や私たちの生活の一部です。Instagramのタイムラインやストーリーズ、 Youtubeの「〇〇〇やってみた」系動画、TikTok・・・
それらはカラオケで、歌う本人と、それを見て(見ないときもあるけど)みんなでその場の空気を楽しむことと似ているような気がします。

そうした誰かと共感できるスタイルを装う一方で、matohu のアイテムは、自分自身を装うように作られていると感じます。アイテムとして代表的な長着は、アウターですがポケットは無く、身頃を前でかき合わせて紐とボタンで留めるので、カジュアルで動きやすい服装と違い、身頃の布のゆったりと余す感じを肌で感じ、シーズンテーマと相まり、場所場所で感じる空気感に自身の感情が同期していくような感覚にさせてくれます。

他から見れば、よく理解されないし正しいか疑問に思われる事を、自分がどう感じ、何を糧としていくか考え続けることは、多様性が求められる現代に必要な事であると思います。
周りの人にとってだけではなく、自分なりの楽しみを見つけて追求する事、そのための見方や楽しみを増やすきっかけになれれば幸いです。