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想像を超えるアイデアソース

サプライズを創出し続ける人々の
想像を超えるアイデアソースをご紹介します。

2015年06月19日

代表取締役社長 石田 保夫さんのアイデアソース

第一回


想像を超える「エッセイ」

小さな箱の中に人生が垣間見える
この本を書店で発見したときは、こんな地味な内容が本になっていたのかと驚いた。
これには、いわゆるキャラ弁のように見栄えのする弁当や、特別豪華な“よそゆき”の弁当はでてこない。ここに掲載されているのは、煮物と白飯だけだったり、昨夜の残り物を詰めたような、ごくありふれた弁当だ。それらが集められ、一冊にまとめられ、しかもすでに3巻目が発行されているとは!
この中の弁当は、別にどれもが愛妻弁当や優しいお母さんの手作りという訳ではない。なかには自分で作った握り飯だけの弁当なんてものもある。しかしそのどれもが実にうまそうで、読んでいるだけで、なんだか懐かしくあったかい気持ちにさせられる。

実は「おべんとうの時間」というエッセイを、私はこの本に出会う前から知っていた。これは全日空の機内誌の中で連載されているエッセイで、私は出張のたび機内で読むのをひそかに楽しみにしていた。特に長い海外出張から帰る便の中では、殊更このコーナーが楽しみで、日本に帰ったら「まず何を食べようか」と思いをはせることもしばしば。そんなとき、真っ先に脳裏に浮かぶのは、炊き立ての白飯にしらすと大根おろし、それに醤油をひと垂らし。それか、納豆と熱い味噌汁に美味い海苔。まさに子どもの頃から慣れ親しんだ日常の食事だ。

私が中学生の頃、弁当の定番は、切干大根とソーセージの炒めもの。ソーセージはもちろん魚肉だ。ただごくたまに、ちらし寿司を用意してくれたことがある。そんなことがあるとしばらく幸せな気持ちが続いたものだ。

出先で食べる弁当は茶の間の延長だ。

もしかしたら、あの頃の私は、子ども心にちらし寿司から「今日は母親の機嫌がいい」と察して、尚更それを嬉しく感じたのかもしれない。母は亡くなったが、今でもあの時のちらし寿司を食べてみたいと思う。

この「おべんとうの時間」には、小さな弁当をモチーフに、ごく普通の人たちのごくありふれた暮らしが描き出されている。衝撃的なものはなにもない。しかし、なぜか心が揺さぶられ、次のページを読み進まずにはいられない。
一冊にまとめられたこの本を読み終わって納得した。「そうか!弁当とは日本人の心のルーツだったのか」。なるほど、だったら人気があるのも納得だ。続刊の発行が待ち遠しい。

おべんとうの時間3

写真
阿部了
阿部直美
出版社
木楽舎
価格
1,400円+税