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かたわらに茶がある日本の未来

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「セカンドシーズンスタート」

マーケティング

2024年9月27日

まつり前夜

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 お茶がフォーカスされるのは、新茶の芽吹く春だけではありません。実は夏から秋にかけての今、日本茶はあるところで大変な注目を集めています。それは、優れた日本茶を選ぶ品評会。この時期、日本各地で、今年一番優れたお茶を選ぶための品評会が開催されています。品評会とは、その地域や団体によって規模や評価の方法も違いますが、お茶のプロが「これこそは!」と今年のお茶を推し合う所。
 ここ静岡では先日、「全国茶品評会」が静岡市の静岡茶市場で開催され、全国から出品された787点のなかから、最高賞の農林水産大臣賞が決まりました。
 全国茶品評会は、今年78回目を迎える、全国お茶まつりの主要行事のひとつ。審査は、普通煎茶、深蒸し煎茶、かぶせ茶、玉露など7茶種8部門で、その部門ごとに最高賞の「農林水産大臣賞」を目指すものです。審査方法は官能審査と呼ばれる方法で、まずお茶の葉の形や色を目や手で触れて審査する「外観審査」。そして、それを熱湯で淹れた浸出液の色や香り、味を審査する「内質審査」のふたつで構成されていて、専門家たちが項目ごとに丹念に審査を行い、その合計得点で順位を付けるというもの。今年農林水産大臣賞を受賞したのは、普通煎茶10kgの部が鹿児島県南九州市の出品者。普通煎茶4kgの部は、静岡県浜松市の出品者。深蒸し煎茶の部は、静岡県掛川市の出品者。ということで静岡県内のプロも激闘中。今年の全国お茶まつりは、9年ぶりの静岡県開催。令和6年11月2日、3日に初めて浜松市で行われます。熱い戦いを終えたプロの皆さんと優れたお茶も集まりますし、楽しいイベントが盛りだくさんのお茶のおまつり。是非皆さん、秋もお茶を楽しみに静岡県へお越しください。

茶セカンドシーズンスタート

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 1年の中で、日本茶が注目されるのは、やはり葉先が柔らかくフレッシュで、冬の間にうま味や栄養をたっぷり蓄えた新茶でしょう。でも実は緑茶って、新茶が収穫された後も何度か収穫されているのをご存じですか?
 新茶のことを一番茶という呼び方をします。一番茶は品種にもよりますが、春先から5月前後に、その年初めて収穫されたお茶のことです。一番茶は、緑茶特有のアミノ成分、テアニンがたっぷり含まれていてうま味が強いことが特徴で、反対に渋みや苦みのもととなるカテキンの含有量が少ないといわれています。
 そして、その一番茶を収獲してから50日ほどで、次のお茶、二番茶の時期を迎えます。主に鹿児島では5月末頃、静岡では6月に入ってから収穫される二番茶。この時期の気候や環境は日本茶にとっては育ちやすく快適で、スピーディにすくすくと葉をのばしていきます。そのため、一番茶に比べて二番茶は、カテキンやカフェインが多く、苦みや渋みが強いものの、抗菌作用などが期待できる、健康に有効なお茶にしあがります。
 さらに、その後、7月から8月の最も暑い時期に収穫されるのが三番茶。このように、緑茶の収穫タイミングは1年を通じて何度か訪れます。そして三番茶の後も、緑茶はすくすくと葉を伸ばし続けていきますが、これをあえて収穫せずに育て、秋から冬にかけて収穫するお茶を秋番茶、秋冬番茶などといいます。静岡では9月から10月がその時期です。秋番茶、秋冬番茶は一番茶に比べたら、うま味が少なく、渋みが強いといわれますが、ポリサッカライドという血糖値を下げる働きのある成分が多く含まれるといわれ、近年注目を集めています。しかも秋番茶は新茶に比べてとってもリーズナブル。いわばこれからの季節は茶のセカンドシーズン。味覚の秋にたっぷりの秋番茶を召し上がれ。

一服

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 いつからでしょうか?「一服」ってあまり言わなくなったのは。
 少し前まで、仕事や勉強中に「ちょっと一服しましょう」などと言って、手を止めリフレッシュしていた気がするのに、最近は、「一息入れませんか」とか「ブレイクしましょう」など、一服ワードの使用頻度が下がった気がするのです。
 そもそも一服ってどんな意味だったのか、あらためて調べてみると、一服の「服」は服飲を意味していて、口から身体に取り入れることを表しています。タバコも以前は吸うのではなく飲むと言っていたことから一服と表現されていたのだとか。なるほど、お茶や薬はともかくして、喫煙については、一服ってかなりマッチします。だから、もしかすると、最近一服という言葉を聞かなくなった気がするのは、喫煙率が低下したことが関わっているのかもしれません。そう考えるとちょっと腑に落ちる気がします。
 そして、今なお、一服が守られているのは茶道の世界。濃茶をいただくときには、一杯ではなく一服。お茶のはじまりは薬としての活用でしたから、一服と呼ぶのはもっともなことかもしれませんが、そこにはお茶のもつ薬効成分だけでなく、心落ち着ける空間や時間をつくり出すという意味合いが強く含まれている気がするのです。出会った方々と、お茶を目の前にして、ほんの一瞬、日常から離れ心静かな時間を共有する。それこそが「一服」なのかも。たまにはスマホから手を離して、目の前の誰かと一服しませんか?

文:原田亜紀子 絵:土屋弘子