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かたわらに茶がある日本の未来

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「暑い地で飲むお茶」

茶種・淹れ方

2024年7月12日

三大銘茶が変わる?

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 昔から、三大銘茶と呼ばれる茶の産地があります。静岡茶、宇治茶、狭山茶がそれにあたりますが、それぞれに特徴があり、日本全国で親しまれています。例えば、静岡茶は濃い水色とふくよかな味わいが特徴の深蒸しが多く、京都で生産されている宇治茶は、玉露や抹茶。狭山茶が生産される埼玉県は、かつては北限の茶産地と言われていました。現在も、この三大銘茶は高級茶として知られていますが、最近はこれに生産量が多い鹿児島県の知覧茶などが加わってきています。また、日本で栽培される茶のほとんどが中国種で、日本に初めてお茶が伝わったのは平安時代。最澄、空海、永忠らの遣唐使と同行した留学僧だといわれています。その後、日本で初めて茶の栽培がおこなわれたのは、京都栂尾の高山寺。華厳宗の明恵上人が植えたことからはじまり、三重県の八島や河尾、静岡県の清見などへ広まっていったのだとか。
 お茶の栽培には、年間の平均気温や、年間降水量が深くかかわっていて、特に-2℃以下になると茶の木が枯れてしまうため、長らく茶の北限産地は狭山とされていました。しかし、現在は、南は沖縄、北は東北地方にまで広がっていて、最近は北海道でも茶の栽培に挑戦するプロジェクトが進んでいるのだとか。茶を生産する活動が広がることは喜ばしいとはいえ、その背景には地球温暖化があるのだと考えると、少々悩ましいのも事実。茶に限らず、ここ数年の間にも野菜や果物、魚介類までその産地が大きく変化しています。このままだと、三大銘茶の考え方もがらりと変わる日がくるかもしれません。地球の未来について真面目に考える必要がありそうです。

ほうじ茶vs麦茶

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 子供の頃、夏の飲み物といえば、やっぱり麦茶。 夏休み、プールから帰ってくると、冷蔵庫のドアポケットから冷えたボトルを取り出して、ゴクゴク飲んだのをつい最近のことのように鮮明に思い出します。麦茶は、焙煎した大麦の種子を煮出したり、水で浸出したりした飲み物。考えてみれば、ノンカフェインで、体温を下げたり、血流を良くする効果があるので、昔から小さな子供にも飲ませやすかったのかもしれませんね。最近は、ペットボトル入りの麦茶の登場で、大人から子供まで季節を問わず手にする機会が多くなった気がしますが、昔は自宅で淹れるのが定番で、その家によって、砂糖が入っていたり、中には塩が入っていたりして、家庭ごとの個性がある飲み物だったように記憶しています。
 そして、ほうじ茶。こちらも麦茶同様、低カフェインで日常的にも飲みやすいと、最近注目を集めています。ペットボトル飲料はもちろん、リーフティーでもリーズナブルでさっと簡単に淹れられるほうじ茶は大人気。麦茶は茶とはいうものの、実際には大麦の種子。ほうじ茶はれっきとした茶の木から採取された茶葉を使った紛れもない茶ですから、茶を応援する身としては、なんとなくほうじ茶を推したくなる気持ちになります。ほうじ茶は、煎茶や番茶などを焙煎したお茶で、ほうじ番茶、京番茶、加賀棒茶、雁ヶ音ほうじ茶、名古屋ほうじ茶などがあります。もともと、日常的に飲むためのお茶で、京番茶などは食事中に提供されることも。香ばしく飲みやすいことで、食欲増進にもつながるのでしょう。最近は、上質な茶葉を焙じた高級ほうじ茶なども誕生し、新しいお茶の世界が広がっています。夏は麦茶もいいけど、カテキンによる食中毒予防やダイエットの効果も期待できる、ほうじ茶もぜひ楽しんでみてください。

暑い地で飲むお茶

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 三大銘茶以外にも、日本国内にはその土地独特のお茶があります。中でも特徴的なことで知られているのが、沖縄県の「さんぴん茶」です。さんぴん茶もほうじ茶などと同じ茶葉からできたお茶です。さんぴん茶という名前の由来は諸説ありますが、中国語の「香片茶(シャンピェンチャ)」が由来して、沖縄で「さんぴんちゃ」と変化したといわれています。さんぴん茶の味わいは、ジャスミン茶によく似ていますが、さんぴん茶の方は、烏龍茶などと同じように半発酵茶の一種で、茶葉を発酵させ乾燥させてから、ジャスミンの花の香りをつけています。ジャスミン茶の方は、茶葉を発酵させることはありません。収穫した茶葉をそのまま乾燥させ、そこにジャスミンの花を加えて花の香りを直接茶葉に移しています。どちらもよく似ていますが、半発酵させることによって味わいには大きな違いがありますので、ぜひ飲み比べてみてほしいところ。さんぴん茶は、沖縄県に行けばほとんどどこでも飲むことができますし、最近はインターネットでも簡単に手に入ります。
 ジャスミンに含まれる「ベンデルアセテート」という香り成分には、自律神経を整える作用があり、脳をリラックスさせたり、ストレスによる不安を軽減する効果が期待できたり、集中力を高める効果も。暑い地の沖縄では日常的にさんぴん茶の効能を活用してきたのかもしれませんね。最近では、沖縄よりも暑い日が続く本州。暑い地で飲むお茶でたまには気分転換しませんか?

文:原田亜紀子 絵:土屋弘子