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かたわらに茶がある日本の未来

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「茶と茶色」

健康への効果

2024年8月30日

茶色ってなに色?

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 「茶色」と聞いてイメージするのはどんな色ですか?12色の色鉛筆や、クレヨン、絵の具セットにも、かならず入っている茶色。風景画なら、木の幹や土を塗るのに欠かせない1色ですよね。JISの色彩規格によると、茶色は暗い灰みの黄赤と定義されているのだとか。なるほど納得という気もしますが、ところでどうして茶色なのでしょう?お茶の単語からイメージするのは、やはり緑色。でも似ても似つかない暗い灰みの黄赤が茶色と呼ばれる理由がなんだか気になります。茶色の歴史は古く、室町時代から日本では馴染みのある色。当時、茶の葉で染色した衣類などが、現在私たちが知る、黄色と赤と黒を混ぜ合わせたような色に染まったことから茶色という名前がついたようです。
 ひとことで、茶色といっても、日本の伝統色と呼ばれる497色のうち、茶という名前のついた色は、藍媚茶から始まって柳茶まで151色もあり、なんと3分の1近くの色の名前が茶に関連しています。
 そして、もうひとつ大切なことがあって、飲料のお茶の色のことを茶業界では水色といいますが、その水色が私たちのよく知る、いわゆるグリーンになったのは、実は最近のことなのです。日本での茶の歴史は中国からの伝来だといわれていますが、現在の煎茶のスタイルが生まれたのは、江戸時代のこと。安定した徳川の世で、茶の湯が武家や上方で成熟し、新しい文化として濁りのない煎茶文化が、文人たちによって育っていったようです。長い歴史の中で、茶色は現在の色に決まったのですね。そして肝心の水色を表現する言葉は、一般的に黄緑色や濃い緑、深緑など、結局のところ緑がついて回っています。もしかするとこれから、お茶の水色も緑以外の新しい言葉が生まれてきたりするのでしょうか?最初に名づけるのはあなたかも。ちょっと楽しみですね。

健康に役立つお茶

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 茶が健康に役立つことは、よく知られています。その歴史はとても古く、中国では紀元前、日本でも1200年前から薬として飲用していました。栄西は「茶は養生の仙薬なり」と記述していたことは、茶の歴史の中では有名なお話で、昔から、茶が不老長寿に役立つものとされてきました。
 現在は、抗酸化作用やがんの予防、動脈硬化や血圧上昇を抑える作用、さらに血糖値上昇や肥満の予防など、成人になると気になるあれこれに効果があることが科学的に実証されています。さらに、食中毒やかぜの予防に効果がある抗菌、抗ウイルス作用があるとなれば、子供から大人までぜひお茶を飲んでいただきたいもの。
 そして、特に知ってほしいのがお茶の消臭効果。緑茶に含まれる、カテキンやフラボノール類、クロロフィルには、口臭のもととなる悪臭物質にアプローチする作用があります。だから抽出したお茶を飲むだけでも気になる臭いに効果がありますし、さらにクロロフィルは茶葉を直接食べたり飲んだりすることで摂取することができる成分なので、粉末状にした茶葉から作った緑茶なら、さらにその効果が期待できそう。
 最近は、この茶の持つすぐれた働きに着目して、飲んだり食べたりする以外に、化粧品や衣料品、日用品、さらには家畜の飼料やペット用品など様々な分野に活用されています。特に、最近の技術でカテキンがプラスチックに活用できるようになりました。そのことで、エアコンや冷蔵庫用のフィルターなどに茶の安全な抗菌機能や消臭機能が利用されています。お茶ってすごい!
 「緑茶を淹れると、茶殻が出るから、ちょっと……」などと、厄介もの扱いする声を耳にすることがありますが、あの茶殻にも消臭や抗菌効果が。昔はあの茶殻を玄関などに撒いて掃き掃除をすると埃を集めるだけでなく、消臭効果もあってまさに一石二鳥だったんですよね。茶殻のことちょっとだけ見直してあげてもらえませんか?

ストレスケアにもお茶

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 お茶の効果は、身体だけではなく、脳にもアプローチすることがわかっています。それが、緑茶特有のうまみ成分、「テアニン」。テアニンは緑茶に多く含まれるアミノ酸の一種で、心身をリラックスさせたり、ストレスを軽減させたりする作用があるといわれています。毎日の暮らしの中には様々なストレスがあり、ストレスを受けると、イライラしたり、カッとして興奮したり、ズーンと落ち込んだりしますよね。特に、猛暑の日々は身体はもちろん、目に見えないストレスによって脳へのダメージも強くなりがち。
 ストレスをなくすことはできなくても、上手にうまく付き合っていきたいもの。そのときにお茶のテアニンの成分が有効で、カッとしたり落ち込んだりする脳を穏やかに落ち着かせ、バランスを取り戻します。さらに、テアニンには、良質な睡眠へといざなう効果があることも知られていて、一杯のお茶は寝苦しい夜にもぴったり。お茶にはカフェインが含まれているので、夜寝る前に飲むことを敬遠する人もいますが、緑茶のカフェイン成分はコーヒーなどと比べると微々たるもの。さらに水出しか氷出しで抽出すれば、カフェインの興奮作用はほとんど発揮されませんからご安心を。寝苦しい暑い夏の夜には、水出しのお茶を電子レンジなどで加熱して、温かくして飲むのがおすすめ。お茶の成分が、高くなった体温を下げると気持ち良く眠りに導いてくれるはず。まだまだ暑い今年の夏、一杯の緑茶で乗り切りませんか?

ご協力※出典サイト:伝統色のいろは (irocore.com)

文:原田亜紀子 絵:土屋弘子