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「新年」
歴史・文化
2025年1月6日
花びら餅
和菓子は季節限定のものが多くありますが、お正月ならではのものが花びら餅です。薄く丸く伸ばした求肥の真ん中に、べに色のひし餅を重ね、その上に白みそを餡に加えたみそ餡と甘露煮にしたごぼうをのせて半分にたたんだものが花びら餅。なかなか手の込んだ作りの上、年末年始のごくわずかな期間しか店頭に並ばないので、知らない人も多いかもしれませんね。
花びら餅の原型は、平安時代から宮中で正月の三が日に長寿を願って食べられていた菱葩(ひしはなびら)という料理です。それが、現在の花びら餅に生まれ変わったのは明治時代のこと。最初に考案したのは、戦国時代から江戸時代まで350年以上もの間、御所に餅を納めていた川端道喜(かわばたどうき)という老舗だったといわれています。明治時代に、京から東京へ天皇と首都が移ったときに、この川端道喜は京に残り、茶席での和菓子を作るようになり、そのときに考案したとされるのが花びら餅。その後、花びら餅は正月の茶事の菓子として全国に広まりました。
初釜
茶道では、新年を迎えて最初に開くお茶会を初釜といいます。茶道の世界では新年会のような行事で、だいたい1月10日前後に行います。年が明けて初めて釜に火を入れることから初釜とよばれます。初釜は派手な服装はNGですが、正月らしい松竹梅などお目出たい模様の着物で参加される方も多く、松の内が明けたこの時期に街を着物姿で歩く方たちを見かけると、『初釜に参加したのかな?』と想像してしまいます。街にしっとりとした風情をもたらしてくれています。
ちなみに、茶会では茶室に入る前に、持参した白足袋に履き替えたり、白足袋に重ねてきた足袋カバーを脱いだりします。男性も和装で参加ることが好ましいとされていますが、スーツでも参加可能で、その場合のソックスは白が基本。白足袋もソックスも、茶室を汚さないという日本人らしい気遣いからきているマナーなのです。
さて、初釜ならではの茶室のしつらえに、結び柳と紅白の椿があります。結び柳とは、床の間の天井近くから床に届くほど長い柳を途中でくるりと輪に結わえたもの。結び柳には、人や縁を結び、生み出すという意味があり、丸く結わえた輪を太陽ととらえた縁起のよいもの。そもそもは千利休が送別の花として飾ったことに由来するとか。そこから、新年を旅立ちになぞらえて釜に飾るようになり、今に残っているといわれています。
今年も一年、柳のようにしなやかに過ごしていきたいものですね。
笑門来福
笑う門には福来る。悲しみや苦しみがあっても、希望をもって朗らかに笑顔で過ごせば、必ず幸せが訪れるということわざ。笑いの絶えない家や家族には、幸せがやってくるという意味でも使われます。
一杯のお茶には、悲しみや苦しみから、ひと時、心を解き放つ力があります。
一杯のお茶を皆で争いや諍いを終わらせることができます。
一杯のお茶を、誰かのためにそっと淹れれば、それは目に見える愛の形。今年は、誰かのためにお茶を淹れて、一緒に笑顔になりませんか?
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