vol.3 吉田竜太
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- SPECIAL GUEST 車いす陸上選手 吉田竜太(よしだ りょうた)
- 2014年3月1日SUS株式会社入社
24歳で交通事故に遭い、腰椎を骨折し下半身不随に
2012年ホノルルマラソン第3位
2013年東京マラソン2013第4位
2013年第13回全国障害者スポーツ大会1500m銀800m銅
2014年かすみがうらマラソン車椅子の部(フルマラソン)優勝など - (※2014.8.8現在)
- STAGE1 たったふたりの相撲部
- STAGE2 オートバイ事故で腰椎骨折
- STAGE3 パパがんばる
- HOST SUS株式会社 代表取締役社長 石田保夫
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たったふたりの相撲部
- 石田
- 吉田さんは、昔からずいぶん活動的なタイプだったんですよね?
学生時代は、立教大学の相撲部で活躍されたとか。
- 吉田
- 活躍と言われると微妙なんですが・・・。
- 石田
- 立教大学の相撲部というのは、強いんですか。
- 吉田
- はい。名門です。以前は学生横綱を輩出してました。
- 石田
- えっ、それは素晴らしい!そこで、吉田さんは活躍されていたんですね?
- 吉田
- 僕が在学していた、2001年頃は、まったくだめです。そもそも、人がいなかったんです。
私の同級生が主将だったんですが、何年も部員がいなかった相撲部に彼がひとりで入部して、彼から「一緒にやらないか」って誘われて入部したので、最初は部員がふたりきりだったんです。
- 石田
- その友人にほだされて、助けたんですね。
- 吉田
- そうですね、確かにほだされた部分もあります。でも、大学生活で何か結果を残したいと思っていたので、私にとってもチャンスだったんです。
- 石田
- でも、相撲は初めてだったんでしょう?やってみてどうだったんですか?
- 吉田
- はじめる前は、相撲って、裸でまわし巻いて、ちょっとナンだなとも思ってたんですが、実際に土俵に上がって汗をかいてみると、純粋にスポーツとして、すごく面白いと思いました。
- 石田
- そういった中で、戦績はどうだったんですか?
- 吉田
- 大学のリーグ戦に出場したんですが、そもそも出場メンバーが5人は必要なんです。
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- 石田
- じゃ、部員ふたりの吉田さんのところはどうなるの?
- 吉田
- 「ちょっと頼む」って頭を下げて。柔道部とか、レスリング部とかの部員に協力してもらいました。
- 石田
- それはすごい!でも、その時だけのお手伝い部員では勝てなかったんじゃないですか?
- 吉田
- いえ、それがそうでもなくて、柔道部とかだと、まわしさえ取れれば、足技とかで、何かできるんで、最後は三部リーグで、 3番手くらいまでにはなっていましたよ。
- 石田
- 素晴らしいですね!
- 吉田
- はい。なかなか経験できないことばかりだったので、入ってよかったですし、誘ってくれた同級生には今でも感謝しています。
- 石田
- ところで、大学生くらいだと、女性にモテたいとか、カッコいいことしたいとかって思いが強くなる時期じゃないですか?
そういう意味で、相撲部ってどうだったんですか?
- 吉田
- とってもレアだったので、学内では、「ホントに相撲なんてやってるヤツがいるのか」って、逆に興味を持たれる機会も多くて。それと、同じようなシチュエーションの映画があって、そのイメージが非常にカッコよかったので、いい意味で注目を集めたかもしれません。
アイドルとまでは言いませんが、同学年の中では、話題のふたりだったと思います。
- 石田
- それは、ラッキーでしたね!
- 吉田
- そうかもしれません(笑)
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オートバイ事故で腰椎骨折
- 石田
- 吉田さんは、元消防士だったんですよね?
- 吉田
- はい。祖父も消防士で、小さい頃に亡くなってしまったんですけど、本当に可愛がってもらっていたので、職業を決めるとき、頭の片隅に祖父の仕事を継ぐという思いがあったのかもしれません。
- 石田
- そういう思いを果たして、消防士になって、事故に遭われてしまったんですね?
- 吉田
- 社会人になって1年半でした。消防職員になって、半年勤務して、後の半年は消防学校に入ったんです。そして消防学校を卒業した直後、5月の終わりに事故に遭ったので、実際に勤務したのは、1年と少しです。
- 石田
- それは、大変なことでしたね。
- 吉田
- はい。休日にオートバイに乗っていて、交差点に信号無視をして進入してきた自動車と衝突しました。
気づいたときには空を見上げて倒れていました。
- 石田
- ほんの一瞬の出来事ですよね、その時はどんな気持ちだったんですか?
- 吉田
- 救急車の中で、足が動かないことはすぐ分かったので、まず「仕事どうしようか」と思いました。
その上、自分の職場の管内で事故に遭ったので、救急隊員は同僚で、「お前が事故に遭ってどうするんだ」って、救急車の中で散々怒られて…。
「はい、すいません」って言いながら、運ばれました。
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- 石田
- それから、入院して。
- 吉田
- はい、リハビリに入りました。実家に住んでいたんですが、最初は現実を受け入れ難くて、特に母親には辛くあたった時期もありました。
- 石田
- ご両親が支えてくれたんですね?
- 吉田
- はい。家族や彼女のサポートもあって、時間はかかりましたが、なんとか立ち直ることができました。
- 石田
- よかったですね。そして、車いすマラソンに取り組むようになったんですね。きっかけはなんだったんですか?
- 吉田
- リハビリの中に、スポーツプログラムがあって、そこでの体験がすごく面白くて。事故で失ったものを少しでも補えるんじゃないかと思って。
- 石田
- マラソンは、吉田さんを充足させてくれましたか?
- 吉田
- すべてではないかもしれませんが、随分救われました。昔は、サイレンを鳴らして、走る消防車を見たりするとちょっと涙ぐんだりしたこともあったんですが、最近は大分落ち着いてきて。でも「ああ、乗りたいな」とか、まだ思ったりはします。でも、本当は、そもそもそんなこと思っちゃいけないんですけどね。サイレン鳴らして消防車が走るってことは災害が発生してるわけですから。
- 石田
- ところで、先日の「かすみがうらマラソン」では優勝されたそうですね。おめでとうございます。
- 吉田
- ありがとうございます。
- 石田
- 次の目標はリオのパラリンピックへの出場ですか?
- 吉田
- はい、狙って頑張っています。
- 石田
- いけそうですか?
- 吉田
- 微妙なポジションにいると思います。日本からは5、6名は出場できると思うのですが、総合的にみて、今の私はちょうどその出場人数のギリギリぐらいに位置していると思うんです。
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パパがんばる
- 石田
- 十分チャンスはありそうですね。そして、出るからにはメダルを狙って欲しいというのは、国民としての心情なんですが、日本のレベルは、国際的にみてどうなんですか?
- 吉田
- かなり高いレベルにいます。ぜひ、メダルも狙いたいですね。
- 石田
- 2年後が楽しみですね。吉田さんの今の課題は何ですか。
- 吉田
- 技術的にはダッシュする力というか、加速力です。選考は来年だと思いますから、来年までに何とかしたいと思っています。
- 石田
- 車いすマラソンというのは吉田さんにとって、本当にいい出会いでしたね。出会いといえば、吉田さんはご結婚されているんですよね?
- 吉田
- はい。2008年に結婚しました。もう結婚して6年ぐらいたちます。
- 石田
- 結婚したのは車いすマラソンを始めてすぐの頃ですか?奥さんとは長いお付き合いだったんですか?
- 吉田
- そうですね。20歳のとき、学生時代のバイト先で出会って。
- 石田
- 事故の前からの付き合いだったんですね。けがをして、随分、ご自身も環境も大きく変化したと思うんですが、家庭を持つことに不安はありませんでしたか?
- 吉田
- おかげ様で、家庭を持つことには、不安はありませんでした。けがをした後も、彼女はまったく変わらなかったですし、不安を口にしたことはありませんでした。
- 石田
- 素晴らしいですね。奥さん自身も、愛する人がけがをすれば、少なからずショックだったでしょうに。その方は、もともと、そんなにしっかりしたタイプだったんですか?
- 吉田
- いえ、ぜんぜん、そんな風ではなかったです。でも、彼女のおかげで、私も勇気が持てましたし、随分助けられたと思います。今も、頭が上がりません。
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- 石田
- 意外とやるなって感じ?
- 吉田
- はい、かなり。でも、子供が生まれてからは、私のことは、かなり雑な扱いになってしまいました。
- 石田
- それは、奥さん、ますます正しいですね。(笑)まずは、子育てが大事ですから。ところで、お子さんはおいくつですか?
- 吉田
- 3歳の長女と半年になる長男がいます。
- 石田
- ふたりとも、可愛いさかりですね。
家族の方が応援してくれると、さらに心強いんではないですか?
- 吉田
- 今までも、長女は妻と一緒に応援に来てくれたことがあったんですが、そういう時はやっぱり、「父としてカッコいいとこ見せなくては!」と、気持ちが引き締まる思いがしましたし、結果もよかったです。
- 石田
- 父心ですね。リオの頃には、そろそろご長男も物心ついている頃ですよね?父としての吉田さんの姿勢や力強さを無言で見せるチャンスですね。
- 吉田
- はい。そうなるように頑張ります。
- 石田
- まずはリオに出場できることを、心から願っています。SUSも吉田さんを、力いっぱい応援しますよ!
- 吉田
- ありがとうございます。期待していてください。
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※この対談は2014年6月4日に行われたもので、年齢や時期などは当時のものが記載されています。